宇宙の寝癖クロワッサン:ウェッブ望遠鏡、巨大ガス惑星 WASP-17b の歪んだ卵形大気を発見

朝起きて鏡を見た瞬間、片側だけ激しく跳ね上がった頑固な寝癖に絶望した経験があるなら、1,300光年先の惑星 WASP-17b の不運に思いを馳せてみてください。この巨大惑星は、大気全体が宇宙のクロワッサンのように恒久的にひん曲がってしまっています。
学術誌『Nature Astronomy』に掲載された最新研究において、米コーネル大学と英ブリストル大学を中心とする国際天体物理学研究チームは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測データを用いて太陽系外惑星の縁における史上初となる3次元大気プロファイルを構築しました。そして判明したのは、教科書に載っているような丸く整った姿とは程遠い、物理法則に揉みくちゃにされたような WASP-17b の異様な歪みでした。
🥐 歪んだ巨大ガス惑星ができるまで
木星の2倍近い体積を持つ巨大惑星を歪んだ卵に変えてしまう宇宙のメカニズム:
- 永遠の灼熱と極寒: WASP-17b は主星と潮汐固定されており、片面は永遠の灼熱の昼、もう片面は永遠の極寒の夜に閉ざされています。
- 時速8,000キロの超暴風: 激しい昼夜の温度差が赤道付近に猛烈な超音速ジェット気流を生み出し、過熱された大気を夕方側の縁へと押し流し続けます。
- 660℃の東西温度差: 夕方の縁は朝方の縁より約 660°C(1,200°F) も高温で、その熱膨張により大気層が宇宙空間へ 1.8倍も大きく突き出して います。
- 「透過ストリング」手法の勝利: 惑星が恒星の前を横切るトランジット時、大気の各スライスを透過する恒星光を細かく分析することで、この非対称構造を暴き出しました。
WASP-17b は元々、天文学界で「最もフワフワな惑星」の一つとして名を馳せていました。質量は木星の半分程度しかないにもかかわらず、主星からの強烈な放射熱によって半径は木星の約2倍にまで膨張しており、その密度はシェービングフォームやバルサ材並みにスカスカです。しかし、これまでの大気観測モデルでは、すべての惑星大気が均一な真円であることを大前提として計算されていました。
ところがJWSTの赤外線スペクトルが示したのは、全く異なる姿でした。風上の朝側は驚くほど低温でコンパクトにまとまっているのに対し、風下の夕方側は手で握り潰された水風船のように宇宙へ向かって大きく張り出していたのです。暴風ジェットが過熱大気を冷める間もなく運び続けることで、惑星全体がまるでベルトコンベアのように機能しています。
🔭 なぜ天文学界の常識が覆るのか?
この発見は、遠く離れた異世界の観測方法に革命をもたらします:
- 1次元モデルからの脱却: 大気を均一な球体と仮定する従来のやり方では、水蒸気や炭素比率などの化学組成推定に大きな誤差が生じる恐れが判明しました。
- 光年彼方の立体気象予測: 今回確立された透過ストリング手法により、太陽系を出ることなく千光年彼方の惑星嵐や雲のダイナミクスを立体的に把握できるようになります。
明日もし朝の身支度でどうしても前髪の跳ねが直らなくても、落ち込む必要はありません。さそり座の彼方1,300光年の深宇宙では、木星サイズの超巨大惑星が何十億トンもの歪んだ大気を引き連れて、今日も元気に銀河を駆け巡っています。
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